少し古い記事ですが、発達障害、自閉症などの子供たちが高卒後、学べる場所が神戸にあります。素晴らしいと思います。
このような高校卒業後も学べ、ふつうの大学生と同じように青春を謳歌できる場が、各地にひろがればいいなと思っています。
◆共に生きる場所/障害者に学びの保障はあるか
「エコールKOBE」で学ぶ若者たち 神戸新聞
障害者への差別的な扱いを禁じる障害者差別解消法が成立し、国連の障害者権利条約の批准が国会で承認された。法定雇用率の引き上げで働く機会も広がる。権利保障や社会参加を促す法整備は着々と進む。
だが、この社会は障害のある人にとって住みよいといえるだろうか。
例えば、憲法が定める「教育を受ける権利」。大学全入時代がそこまで来ているのに、高校教育を終えた知的障害者らがさらに学びたくても選択肢はほとんどない。
そんな若者たちの「学びの場」をと、特別支援学校の元教師らが神戸に立ち上げたのが、「エコールKOBE」。福祉事業の形をとった学びやだ。自らの未来を自ら切り開く若者たちの姿は、教育機会の大切さをあらためて訴えかける。
◇
JR新長田駅にほど近い再開発ビルに学校はある。調理実習は歩いて数分の距離にある市の施設が教室。学生が話し合って献立を決め、調理法を考える。食材は近くのスーパーで仕入れる。サッカーなどの部活動は、ボール遊びができる公園が運動場だ。鉄人28号のモニュメントの下に、学生たちの歓声が響く。
地域そのものがキャンパスだ。
仲間と学生生活を共にする。地域の人と触れ合い、集団の中で一人一人が自らの力を伸ばしていく。学びの原点がそこにある。
【地域をキャンパスに】
エコールKOBEができたのは、2011年の春。和歌山県で行われている障害者のための「学びの場」づくりをモデルに、岡本正さんらが創設した。2年制で、学生は計32人。神戸や阪神間、姫路、大阪などから通う。
特別支援学校の高等部を出た知的障害者で、企業に就職する人は4人に1人。6割以上は作業所などの福祉就労だ。進学を選択する若者は1%にも満たない。
障害の有無や家庭の経済環境にかかわらず、全ての子どもを社会で支え、育てていく。その対象から障害者が抜け落ちている現実を表している数字と言えないだろうか。
「もっと学びたい」「さらに経験を積んで社会に出たい」。障害者とその父母らの思いを受け止めて、この学校はつくられた。「主体的に、豊かに、楽しく」がモットーだ。
ハンバーガー屋で寄り道したり、カラオケに行ったり。友人をつくり、楽しい時間を共有しながら、自分を見詰める。「二十歳前後の若者には当たり前の時間が、障害者にはなかった。だからこそ、学びの機会を広げ、人生を自分で選択できる社会につなげたい」。河南勝学園長は学校に込めた思いを語る。
【広がる第3の選択肢】
第2次安倍政権がスタートして1年余り。その間、政府の教育再生実行会議などが矢継ぎ早に改革案を提言してきた。小学校での英語教育の拡充や、「価値観の押し付け」と反発が強い道徳の教科化はその一部。大学改革も提言しており、世界に伍(ご)する最高学府の育成を目指す。
子どもや学校、大学を競わせ、国や企業を担うエリートを養成する。そんな狙いが透けて見える。
高校無償化に所得制限を設け、文部科学省が実施する全国学力テストで学校別の成績公表を認めたのも、そうした教育改革の延長線上にある政治判断にも見える。
競争や選別ではなく、支え合いながら学ぶ姿勢は広く学校教育全体に求められるはずなのに、実は最もおろそかになっているのではないか。
それを実践しているのが「エコールKOBE」といえる。昨春に巣立った1期生14人は、一般企業で働いたり自立生活を営んだりするための訓練を続けている。「就労先を地域の中で見つけることが課題。この学校が、働きながら立ち寄ったり同級生が集まったりできる場になれば」と河南さんは願う。
和歌山で始まった「学びの場」は、全国の18カ所に広がった。今後も伊丹市などで開設が予定される。
こうした取り組みは、養護学校教育の義務化や全ての希望者の高等部進学に続き、障害者の教育保障における「第3のうねり」とされる。
民間主導で巻き起こるうねりは、公教育のひずみを正す動きといえる。国や自治体が応えるべきだ。
↧
◆共に生きる場所/障害者に学びの保障はあるか 「エコールKOBE」で学ぶ若者たち 神戸新聞
↧