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女性翻訳研究者の告発 名著『民主主義の終わり』は舛添要一の訳ではない。

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女性翻訳研究者の告発 

94年に和訳が出版された名著『民主主義の終わり』は舛添要一の訳ではない。

私が訳したものだ。詳しい顛末は2016年6月14日発売の「女性自身」、続いて放送されるテレビ朝日のモーニングショーなどの報道を参照していただきたい。

 フランス語の政治学の本、ジャンマリ・ゲーノの『La fin de la démocratie民主主義の終わり』の下訳をしてほしいと先輩を通じて頼まれたのは1994年、東大大学院生の時だった。しかし、現実には、舛添要一氏は翻訳作業をなんら、しなかった。朱筆をもらって訂正することも一度もないまま、私は出版社の一室で缶詰になり、編集者と二人きりで手書きや口頭で修正を繰り返し、翻訳を完成させた。

 にもかかわらず、私には何の知らせもなく、同著は舛添要一訳として発売された。売り上げのための出版社の戦略を考慮しても、舛添の仕事量がゼロである以上、せめて、舛添要一監訳・イザンベール真美訳とするのが筋だと今も思う。この件を訴えようにも、舛添要一氏は既に退職していたので、教授会で問題にしてもらうわけにもいかなかった。

 舛添要一訳として売り出されてしまったせいで、私はこの本を研究業績リストに加えることができなかった。若い研究者にとって、研究業績は、大学教員になるための就職活動や学会で活動するために極めて重要なものだ。
 舛添さん、私があなたのゴーストライターを引き受けた事実はありませんよ。無名の大学院生であっても一人の研究者です。研究を奪われることほどつらいことはない。あなたが政治家になったのは国際政治学者というキャリアがあってのことだった。あなたのしたことは、学者としてフェアなことだと思いますか?

 本著ではフランス特有のナシオン(nation)の概念を民主主義の単位とし、グローバリゼーション(本著ではボーダレス化)時代の民主主義の行く末を論じている。「ナシオン」は直訳すると「国民」であるが、国民国家の意味も含有しているため、政治学の専門書ではナシオンとカタカナで表記されることもある。私は、舛添氏と相談する機会を一度も与えられることのないまま、文脈に応じて「ナシオン」を国民国家、国民、ときには国家と訳し分けることに、とくに注意を払ったものだった。

 あとがきで舛添要一氏がいけしゃしゃあとこう書いている。まるで自分が苦労したかのような虚言だ。

本書を訳出し始めると、原語で読み進めたときには逢着しなかった様々な困難に出くわしたそれは本書の記述が抽象度の高いものだからである。そのために何度も手を加えることになり、予想外に時間がかかってしまった」。


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